Tuesday, May 31, 2011

ことの葉


言葉には魂がある、とむかしから伝えられていますが、実にそう思うのです。

そちらの言葉を聞いて、理解して、消化して、こちらからも思想や気持ちを伝える。それが、個人と個人のコミュニケーションであり、お互いを理解するための方法の一つ。

でも、言葉の力はコミュニケーションや表現力だけではないとおもう。言葉で人は笑い、言葉で励まされ、言葉で癒され幸せを感じ、言葉で空気がかわり、言葉で真実を隠し、言葉で傷つけあう。

言葉は潤滑油であり、言葉は毒でもある。


発せられる言葉達は、相手に届き、心の中に留まって、そこで根を張るのでしょう。その根はやがて育っていって、葉が生え、形のあるものになる。それは、相手の中に生きる自分の分身。

自分から放つ言葉達たち、やがて自分の身になっていく。

相手の中に生きる分身が、いつしか葉をしげらせて、大きな木になって、そうやって人は人の人生の仲間になっていく。


言葉にはそんな力もある。
言霊の業。


じっさい、本当のことを言うのって難しい。それに、本当に伝えたいことは、なかなか伝わらない。言葉にならない気持ちっていうのもある。言葉にしない方がいいこともある。無理して言葉を並べたらそれこそ安物の大売り出しのようになってしまった。それでも黙っていたら何も伝わらないから、やっぱり少しは言葉をつかう。

言葉が人のこころに残るならば、できれば笑顔になるような、元気になるような、そんな言葉だけ残したい。言葉で失敗したことはたくさんある。その度に葉っぱが落ちていくのを身にしみて感じた。だからこそ、言葉選びには気をつけたいし、もっともっと自分らしい言葉選びができるようになりたい。


やまとうたは ひとのこころをたねとして よろづのことの葉とぞなりける
ー古今和歌集 仮名序


言葉について考えていたら、ビジュアルデザイナーというコミュニケーションに関わる仕事をしているけど、デザインにも同じことがいえるな、と思った。

ようやく少し時間ができるようになったので、日々の思考やら思想やらをすこしずつ文字にしていこうと思います。

写真上: 家路にて。日吉の夕日
写真下:屋上にて。シアトルの夕日